※インタビューの全文を紹介しております。
 
リサイクルを支える社会基盤
_流通のシステムについて
中井:仕組みの話しに戻りますが、私が一番驚いたのは、物流つまりロジスティックを非常に上手くマネージメントしている点だったんですが、先生は回収あるいは流通のシステムについて、どうお感じになられますか。

清家:私自身はガラスのリサイクルだけではなくて、建設廃棄資材全般のリサイクルですとか、あるいは解体工事からリサイクルに向けての処理というのを、ここ数年研究をしていたのですが、昨年ガラスのリサイクルの話を聞いて、全く同じセンスをもってやっているような気がしたんです。つまり、その廃棄物という姿になってしまうとゴミは運びたくない。0円のものを運ぶと輸送費がコストオンされるわけです。10キロの輸送費と100キロの輸送費では、明らかに100キロ分の方が高くなっている、というような価格差も出てきていますし、そう価格差が出てくると上手くまわらないかもしれない。輸送を含めた流通コストをおさえることで、まず価格が安定する状況をつくりだして、その状況から競争させるということに配慮しているような気がしたんですね。

中井:この物流マネージメントというのは、板ガラスのリサイクルや、びんガラスのリサイクルあるいはブラウン管のリサイクルのすべてにおいて団体が関わっていて、ロジスティックなコントロールがあるような気がしますね。

清家:それは、その別の廃棄物という環境においても、欧州では輸送廃棄物の流通というのが割と神経を使っている。そこには、公的な仕組みがある場合が多いんですよね。一方、リサイクル業者に対する補助とかは殆どなく、ここまでモノを運んできたゴミだった原材料がここに存在している。それからはあなた方の競争です。というふうに、公的なお金が使われているような場合が多いですね。そういったガラスのリサイクルについて幾つかお話を聞かせて頂きましたが、基本的に廃棄物が資源になるようなところまで、つまり流通するところまでは、わりと公的な立場な方々が抑えている。それを、リサイクル業者が市場原理で競争的にやっていると、そういった状況かと思います。
 
_市場原理を活かす
中井:リサイクル業者に対する補助的なものがあまりないということは、逆にリサイクル業者にシワ寄せがくるということになるのですが、先程、できるところからやろうという点では、カレット品質に対しては高度な要求というのがなかったように感じるのですが。

清家:そうですね。ひとつ驚いたことのは、この調査報告の中にもありますが、GGAという組織において、カレットの品質についてはどうやって決めているのか、それによってリサイクルが可能になっているのかと聞くと、何度聞いてもネゴシエーション、ネゴシエーションと言うのですね。ここが日本とは大きな違いで、やはり今できることと、相手が求めていることをつなぐのは、論理を超えて市場でここまでしか許されないということと、社会がここまでリサイクルを求めているということをつなぐネゴシエーションによってしか結論を出せなく、論理的に、工場品質的に、今のリサイクル技術的にそういったことがそういった積み上げてしか結論が出せないということかな、と思いました。
 
_環境意識を育む社会
中井:そのような中でも、再生される原料がいいレベルを保とうとした場合、社会全体として、「いいものを作ろう」というコンセンサスがいると思うのですが、そういえばGGAの方もおっしゃっていましたが、子供の頃から分別の需要性を教育しているということでしたが、どう思われましたか。

清家:そうですね。まず、その社会がリサイクルをするんだという、あるいは環境に配慮するんだという合意が非常に大きなレベルでできていると思うのですね。そっちの大きな合意の方が重要で、でも、「私はこう思う。」というのがわりと小さいというふうに感じました。日本を翻ってみますと、やはりそれは大事だ。でも私は、私の思うことの方が上にあると、それは教育以前に社会の成り立ちとか、一人一人がどう社会に参加しているかというセンスの違いというのかにまずはわかってきましたね。その社会が大事であるっていうことで、子供の頃から分別が大事なんですよっていうことが、教育して社会の仕組みと直結するというところが上手くまわると思うんですね。
 
_ガラスびんリサイクルに見る環境先進性
中井:本当に、びんのリサイクルというのは完全に仕組みとして成立していて、特にドイツで驚いたのは、びんのボトルバンクつまりびんの回収箱が20万、30万あると聞いてびっくりしました。

清家:そうですね。実際どこに行ってもボトルの3つの色分けがされたリサイクルボックスがあって、それは社会が違うなって思いましたね。つまり、あれだけ大きなものを置く場所ということで日本はもめそうなところがありますね。それを置いた上で、みんながそこにびんを入れるという完璧ではないかもしれないけど、おおよそ皆さんが守っているという社会が成立している。びんが、ああいう風に分別されているということだけでも他のものにも波及しているという感じはありますね。一方で、びんのリユースも進んでいる国ですから、そういう意味でもびんを中心としたガラスという身近なものをリサイクルするという仕組みができ上がることによって、おそらく日本よりも遥かに他のものに対するリユースやリサイクルの心がきちんと根付いていると思いました。

中井:一般の生活を通じて、そういう環境を守る、リサイクルを進めるという社会的コンセンサスがかなり広まっている、根付いているという感じでしたね。
 
文責:横浜国立大学 講師 志村真紀
 
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