かわら版
 ツネイシカムテックス(株)福山工場見学レポート
2016年3月19日 
環境広報部会 
 
 
 
  1.日時 2015年12月2日(木)13:00 〜 15:00
 
    2.見学先 ツネイシカムテックス(株)福山工場
広島県福山市箕沖町107-5
 
 
    3.部会参加メンバー 主査 北岡正樹(日本板硝子)/師尾元(板硝子協会)/志村真紀(横浜国立大学)/瀬上信(電気硝子工業会) /齋藤準(ニューガラスフォーラム) /黒光織恵(日本硝子製品工業会)/鈴木正行(板硝子協会)/ 高橋啓市(日本山村硝子) 二田水和弘(硝子繊維協会・GIC事務局)  
 
4.応対者 住吉顧問、曽我取締役、加藤取締役、水上次長
 
    5.目的 2015年GIC環境広報部会の活動の一環として、環境に配慮した工場を見学しその取り組みとリサイクルの実態を学ぶ  
 
    6.工場見学  
 
 
   ツネイシカムテックス株式会社は、造船業を営む常石造船、海運業を営む神原汽船を母体として、船舶廃油の処理会社として1967年(昭和42年)に設立されました。グループの中では、船舶廃油処理・産業廃棄物処理の事業を行っています。
   1997年(平成9年)に島根県隠岐島沖の日本海で発生したロシアナホトカ号の重油流出事故の際には、流出油防除作業に出動し、流出重油4万tのうち2万tを回収処理し、船舶廃油処理の優れた技術を証明した事でも知られ、この油濁防除作業の功績に対し運輸大臣(当時)から感謝状が贈られています。
 
 
 
   今回見学した同社の福山工場はJR福山駅より車で20分程の瀬戸内海に面する工業団地内にあります。
   福山工場は今では、21種類の産業廃棄物の内、動物のふん尿、死体を除く19種類に、またPCB、水銀を除くほとんどの特別管理産業廃棄物の処理に対応が可能です。
   このように多様な廃棄物を短期間で処理する設備として、固形物焼却炉とそれに接続された酸素バーナー式溶融炉の工程を2系列、液中焼却炉の工程を1系列保有しています。
   また、引火性廃棄物等を容器ごと破砕して固形物焼却炉に供給する、ドラム破砕投入設備を保有しています。ドラム破砕機は、この1台を含め、日本には4台しかないそうです。
   固形物焼却炉・溶融炉の工程では一日340t、液状物焼却炉は160tという日本有数の処理能力を誇っています。隣接地には、約115,800m²の最終処分場を保有し、産業廃棄物の収集運搬から中間処理、最終処分までを一貫して行うことができます。
 
 
 
   このようにツネイシカムテックス社では年間10万tを超える産業廃棄物の処理をしていますが、国内では年間約4億tの産業廃棄物が排出されているとのことでした。
 
 
   産廃は、屋内の大きな貯留ピット(貯留能力約7,000m³)に受け入れられますが、投入口には、粉塵が舞い上がらないように、同時に臭気対策として、ミスト散布機が設置されていました。
   固形の産廃は、粉砕され回転ストーカ炉で焼却されます(固形物焼却炉)。貯留ピットを見下ろす制御室から遠隔操作でクレーンを扱っていました。メンテナンス時以外は、1直6名(PC2名、クレーン操作2名、現場作業2名)の4直3交替制で稼働させているそうです。クレーンの動きは壮観でした。
 
 
 
   回転ストーカ炉では、廃棄物の燃焼規準である800℃以上の温度での焼却を行っており、人間の健康や生態系に悪影響を及ぼすダイオキシンの発生が完全に抑えられています。焼却時に発生する熱エネルギーは蒸気として回収し、工場内の発電設備で電気エネルギーに換えられます。最大4,950kwの電力は、工場で使用する電力の約85%を賄っており、エネルギー資源の消費を抑え、CO2の排出削減に貢献しています。
   固形物の焼却後に発生する焼却灰、焼却飛灰および外部より受け入れる燃え殻、飛灰、汚染土壌は、酸素バーナー式溶融炉において1,350℃で溶融します。出来上がった溶融スラグ(水砕)は、土木・建築材料としてリサイクル活用されます。
   溶融炉では、廃石綿の無害化も可能です。通常、石綿の無害化には1,500℃以上の温度が必要と言われていますが、ツネイシカムテックス社では独自の技術により1,350℃という低い温度でもそれを可能にしています。このような高い技術が認められ、2010年(平成22年)には、環境省から廃石綿等無害化処理施設の大臣認定を受けました。
 
 
 
   リサイクル出来ずに最終的に残った利用価値のなくなったものだけが、隣接する最終処分場に送られます。その量は年間何万トンという単位の量になるとのことでした。
 
 
    7.感想  
 
 
   身近でよく見る建築物の解体では、コンクリート、鉄、ガラス、アルミなど何もかも混在した産廃が排出されています。将来的に再生量を増加させ、最終処分量を削減するには、発生量の削減はもとより、正確な分別をするための技術と意識の向上が必要と思われます。
   またガラスに関しても処分されるガラスくずには、建築現場からの混在廃棄物や中身の入ったガラスびん処分物があるとのことです。高度な技術で処理しても、最終的にスラグの中にガラスや陶器が残ってしまうと、リサイクルができないようです。分別できれば産廃にならずリサイクルが可能なわけで、いかに分別が重要であるかを改めて理解できました。
   ツネイシカムテックス社は、産業廃棄物処理能力は相当なものであると感じましたが、やはりこのような事業は、「びんごエコタウン構想」による包括的なバックアップの存在など、受け入れている自治体の理解と、大きな協力があってのことであると感じました。
   廃棄物と言うと汚いもののイメージが強いのですが、これを新たな製品、クリーンな気体、水、エネルギーに変えて、最後本当に不要となったものだけを敷地内に埋め立てているとのことでした。
    あらためて、実際は高度な技術と非常に手間のかかる工程で実現できていることが判り、大変貴重な工場見学になりました。
 
 
 
   最後に、今回の工場見学で大変お世話になりましたツネイシカムテックス福山工場の皆様に、深く御礼申し上げます。
 
 
    以上